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裏表紙:
かつて栄えた巨大産業文明の群は
時の闇の彼方へと姿を消し、
地上は有毒の瘴気を発する
巨大菌類の森・腐海に
履われていた。
人々は腐海周辺に、
わずかに残された
土地に点存し、それぞれ
王国を築き暮らしていた。
ーー風の谷ーー
そこは人口わずか500人、
海からの風によって
かろうじて腐海の汚染から
守られている小王国であった。
表見返し:
ユーラシア大陸の西のはずれに発生
した産業文明は
数百年のうちに全世界に広まり
巨大産業社会を形成するに至った
大地の富をうばいとり大気をけがし
生命体をも意のままに造り変える巨
大産業文明は
1000年後に絶頂期に達し
やがて急激な衰退をむかえることに
なった
「火の7日間」と呼ばれる戦争によ
って都市群は有毒物質をまき散らし
て崩壊し
複雑高度化した技術体系は失われ
地表のほとんどは不毛の地と化した
のである
その後産業文明は再建されることな
く 永いたそがれの時代を人類は生
きることになった
まちがいない 王蟲の 歯形だ
このへんに あらわれた ことは いままで なかった のに
それに しても 食いが あらい ……
もしかした ら 脱皮の あとかも しれない
やっぱり!!
すてき!! 完全な王蟲の 抜け殻なんて はじめて見る ……
まだ新しい
……
きっと今日の
明け方に
脱皮したんだ
コーーン
いい音
キャノピー=天蓋、おおい。
セイッ!
ツツツ
フフフ
セラミック刀の
刃がこぼれて
しまった
武器工房の 者におしえ たら みんな おどり出して しまうな
硬化処理を しなくても このまま 装甲に使え るもの
すごい眼!!
ガンシップの
キャノピーに
ぴったり
これひとつ だけなら 持っても 翔べるかな
とれた!!
なんて
かるい
きれい… ……
ムシゴヤシの 木が午後の 胞子をとばし ている
王蟲が食べた 森の傷を いやそうと しているんだ
まるで 雪……
王蟲はこんな 眼を14も もって どんな ふうに世界を みているの だろう…
さっとこの黒い森を なつかしく あたたかい世界と 思っているん だわ
私たちがマスクを つけずにいったら 5分で肺が 腐ってしまう 死の森なのに…
おわ った ……
コロサレタ …………………
!
だれ!?
コロサレタ
コロサレタ
コロサレタ
ちがう これは人間の 言葉じゃない 心にきこえて くる叫びだわ
つきささる ような悲しみと はげしい怒り ……………
コロサレタ
コロサレタ
コロス!!
アイツ
コロス!!
だれ!?
そこにいるのは
だれ!?
なぜそんなに 憎しみをまき ちらすの
どこにいるの 私に おしえて
コロス
………
ツ!
消えた
いまのは 鏑弾 の音だ
また!!
だれかが 蟲におそ われている
森から 出ないと どこからだか わからない
あそこ だ!!
大王ヤンマ があんなに 集まるなん て……
それに しても 胞子がすごす ぎる まるで 煙のようだわ
アッ
!
王蟲!
王蟲が人を 攻撃している んだ!!
追われて いるのは 武器商人 かしら
鏑弾 使う者なら この弾丸の 意味も わかるはず
とどけ!!
答えた こっちへ 来る
1
2
3
あの人は !?
風上へ!!
!
なんて 立派な 王蟲!!
きっと あの抜け殻の 主だわ
脱皮したば かりなのに もうあんなに 大きくなる なんて…
森を出てしまっ たのに追うのを やめないわ 怒りに 我を 忘れている
攻撃衝動を しずめなきゃ ………
王蟲!!
森へお帰り
ここはおまえの
住む世界じゃ
じゃないのよ
そんなに 胞子をくっ つけて バラまかれて は 困るの
眼がルビーの ように もえているわ 激怒している んだ
さっき 聞こえたあの声 ひょっとしたら この王蟲の……
フフ……
まさか!
ちょっと あらっぽく やるわよ
ストロボ 光弾か!
ギ
蟲の動き がとまっ た………
蟲笛 ………
1匹も傷 つけずに しずめる 気だ……
敵はきえたわ みんな 森へ 帰ろう
ギ…
森へ 帰ろう ここは さむいわ
みごとだ… まるで 蟲の心が わかる ようだ ………
ありがとう 先にいって まつ
さよなら 王蟲
光弾なんか 使って ごめんね
おまえの抜け 殻は だいじに 使わせて もらうわ
先生!
ユパ先生
おお
やっぱり
ハハハ
みちがえたぞ
ナウシカ
負うた子に たすけられ たな
1年半ぶり ですもの
すばらしい 風の乗り手に なったな ナウシカ
ううん
父は
まだまだ
だって……
アラッ
!?
そうそう
すっかり忘れて
おった
こいつの おかげで ひどい目に 会ったんだ
まあ
キツネリス
……
どこから さらわれて来 たのか 大王 ヤンマに運ばれ れているのを 見てな
人の子と まちがえて つい銃を使 ってしまっ たんだ
それで王蟲 があんなに 怒って攻撃 したのね
こいつめ 気を失って おったので 森の毒は 吸わなかった ようだ
おいで ………
さあ ……
おいおい
手を出さん ほうがいい こいつは 野育ち… !!
フフフ
こわくない
こわくない
!
ホラ
こわくない
ねっ ……
おびえて いたんだね でももう だいじょう ぶ
ユパさま
おねがい
この子わたし
に下さいな
あっ
ああ
……
クイにカイ 私をおぼえて いてくれた!
不思議な力 だ……
人にはなれぬ キツネリスを ……
もうこの先は スパッツは 要らないわ るね……
今日来て 下さって ほんとによかった 明日にも 出陣なんです
やはり 戦が始まる のか……
ヴ王の 召集令が 来ました
ジルも歳だ こんどは つらかろう ……
いえ わたしが 父のかわりに 出ます
ナウシカ
が………
戦場へ!?
ばかな! だれがそんな 愚かなことを 決めたのだ
しかたが ないのです 父とふたりで 決めました
父は私に 武装を ゆずる時が 来たと ……
そう だったのか ……
森の毒は もうそんなに ジルの身体を…
ハイ
それが腐海の
ほとりに生きる者の
定めとか……
『腐海』とは
滅亡した過去の文明に汚染
され不手と化した大地に生
まれた新しい生態系の世界
をいう
蟲たちのみが生きる有毒の
瘴気を発する巨大な菌類の
森にいま地表は静かに覆わ
れようとしていた。
もっと早くに 訪れるべきで あった……
イイエ
来て下さって 本当によかった 出陣の前にぜひ 見ていただきたい ものがあるんです
いますぐ 谷に下れば 光のあるうちに 城に入ってます
私ひと足 さきに父に しらせに いきます
ナウシカ ……… 大きく なった ………
巨大産業文明の群が
時の闇の彼方に去ってより千年
セラミック時代終末期
風の谷は
海から吹き抜ける風によって
わずかに腐海の毒から守られる
辺境の土地であった……
城ババさま この前たの れたコトシの 薬草だ
おお
おお
……
なによりの みやげ じゃよ
これで ずいぶん 赤子の生命を すくえる ぞぇ
ナウシカ わしのいない間に 髪をあげた娘たちを よんでおくれ
ハイ
ネカリに
トエト
前に 出なさい
腐海を つらぬく タリア川の 石だ
花嫁衣裳の かざりに つかって おくれ
まあっ ありが とう!!
すごいわ なんてきれい なんだろう !!
ハハハ……
さてさて
だれのために
身につける
のかな…
種まきの すんだ めでたい日に 古い友が 訪ねて来て くれた
みなも 異国の 話をききたい じゃろう
今宵は城の 食糧庫を あけはなって 心ゆくまで 楽しもうぞ
この谷に来ると 心がなごむ ……
しかし
ここでも
……
訪ねるたびに 人の数が少し ずつ減っている
ユパ
おまえのおもいは
わかっている……
が今宵は
むづかしい話は
なしだ
ユパさま
今年の果実酒
です
そうだ わしに見せたい ものがあると いって いたが
今夜は いいの……
先生を ひとり占め しては みんなが 怒るわ
父上だって 話をきき たくて うずうず してる もの
姫さま
姫さま
王蟲を 見たとか 本当ですか
美しい 姫に なったな ……
ウム
しかし
男であったら
何もいう
ことはない
のだが
11 人子どもを もうけて 育ったのは あいつだけ だった
ほんとうに いい品じゃ 姫さまの 腐海あそびも ムダではなか ったわけだな
アラッ
腐海に近づく
なっていつも
小言をいうのは
どこのだれ
だった?
しかし
王蟲の抜け殻を
見つけるなど
一生に一度の
幸運ですぞ
ちょっと とんでみる
ミトじい うしろを たのむわ
姫さま その キツネリスめは だいじょうぶ ですかな
もう
なれたわ
ねえ テト
……
後席ヨシ
前席ヨシ
始動!!
ガンシップ だな あれは ナウシカか ?
ウム
わが娘ながら
小気味よい
のり方をする
あいつには 父のわしより 風の心を肌で 感じとる心が あるようだ
民にも
したわれている
女が族長になった
ためしはないが
あいつなら
やっていけるに
ちがいない
やはり ナウシカを 戦場に出す つもりか ジル
500人にみたない 小国のわしらが 自治権を守って来ら れたのは ガンシップ のおかげなのだ
風の谷の族長は ガンシップの戦士 として トルメキ ア王の戦列にくわ わるという 古い盟約は守らね ばならぬ
おろかな戦とは わかっている しかしツバメも タカとして生きねば とぶこともかな わぬ世なのだ ……
ーリーグはおよそーノットという設定。
赤玉3つ!!
205リーグ
235!!
240
245!!
275!
姫さま 低すぎる !!
300!
中央白玉 エンジン 臨界!!
生きのこり たければ むちゃは ひかえ なされっ
姫さまは ガンシップを まるでひとり乗り のメーヴェの ようにあつか いなさる
だいいち あんなに低く とんでは
地上砲火は かわせても 敵の槍にさされ ちまいますわい!!
もうかんにん してよミトじい ホラッ あんまり怒る から湯気が ……
雲に なってる ……
ウヮッハハハハ
姫さまには
かなわぬ…
しかし この船は だいじにあつかって 下されよ 建造されてから100年 もはやこの1隻しか 残っていないのです エンジンを創る技は 失われて久しい……
でも
なんて
みにくい
船かしら
私はメーヴェ のほうが好き
ガンシップは 風を斬り裂くけど メーヴェは風に のるのだもの……
コロサレタ!!
コロサレタ!!
また あの声 …… !!
コロせ!
コロせ!
………
そこにきて
いる…
コロせ
………
コロせ!
おいで
………
さあ わたしの ところへ おいで
おまえはだれ どうしてそんなに 憎しみを まきちらすの
…………
…………
…………
いたいわ……
なんてはげしい
かなしみ…
!
姫さま どうなされた!!
機首を おこせ 姫さま!
ありがとう テト
姫さま いったい
瘴気マスク をつけて じい
腐海へ いく!!
腐海へ!?
戦闘
巡航
了解!
戦闘巡航
姫さまは 気がよれた か……
もしかして いまの声が 王蟲の 心の声だと したら…
腐海でまた だれかが蟲に おそわれて いる……
こんなに 胸が ドキドキ する
近くまで
きているんだ
………
………
商船が蟲に おそわれて いる!!
隣国の ブリッグだ
地蟲だわ 腐海に着陸 したんだ
おろか者めが 腐海で蟲を殺したに ちがいない もはや手おくれ じゃ姫
エンジンは まだ 生きて るわ
腐海の外へ 誘導する!! じい 旗旒信号 をあげて
誘導する われにつづけ
左へ 回頭せよ!!
……
……
!!
……
……
!!
どうした わけだ!? この船には 女子どもばかり のっておるぞ
回頭 しないわ 舵がきか ないんだ!
じい 主砲の閃光で 舵面から 蟲をはらえるか やってみるわ!!
いかん姫!! やつらは 近づくと跳びは ねてきますぞ
わぁっ! 信号凧が
翅蟲の群を くぐってギリギリ まで接近する 後席 頭を ひっこめろ!
エエイ やむをえん!
前席 発砲したら ただちに 全力離脱せよ!
いくわ!!
これ以上の接近は ムリだ! 離脱しろ 失速するぞ
舵まで あとわずか このまま いく!
どいて 蟲たち!!
舵面に 出た!!
斉射!!
はねた!!
エンジン 全開
姫さま 地蟲のさいご の1匹がはな れましたぞ たすかった …
ブリッグの 舵がいきかえっ 回頭している
腐海をぬけま
す
あと10リーグで
瘴気から
出られる
地蟲の数が へっているな これは 助かる ぞ…
じい
あのつばさ!
アアッ!!
つばさの中に まで蟲が もぐりこんで いたんだ!!
着陸する!
じい 予備の マスクを
これは ひどい…
女子どもばかり とは まるで 避難民の船 のようだ
いったい ペジテ市に なにが あったのだ ……
じいっ!
この子 まだ息が ある
マスクを 出して はやく
み みず ……
しゃべっては だめ 息をすって
ハア… ハア… ……
………… 風の谷の 人たちね… さっきは ありがとう
しっかり!!
ペジテ市の 王族の姫君と おみうけするが 何かいいのこす ことは…
これを… 兄に… 兄にわたして ください…
わたしは ペジテの長の娘 ラステル…
ペジテ市は きのう… トルメキアの ヴ王の親衛軍に おそわれて 焼きつくされ ました
生きのびたのは わたしたちだけ でも敵の船に おわれて 腐海にかくれて それで蟲が ……
ペジテ市は トルメキアとは 古い盟約で むすばれた 味方のはず いったいなぜ ……!?
風の谷のかた おねがい それを兄に… けっして ヴ王にわたさ ないで…
わかった きっとキミの 兄さんにわた してあげる
そのかたは どこに!?
きっと
………
ネ……
………
………
………
姫さま もどりましょう 腐海の木々どもが エサに気づいて 胞子をとばして います やがて ここも 埋もれましょう
それに ペジテ市 のことも はやく谷へ しらせなければ
………
………
ワァッ!!
あれは…
王蟲!!
あの王蟲
だわ
い…いつのまに こんなに近く まで…
姫さま はやく ガンシップへ
まって 目が青いわ 攻撃する気は ないのよ…
ミンナ シンダ…
シンデ シマッタ
右下に 船の残骸 !!
逃走した ペジテの ブリッグに まちがい ありません
蟲つかいどもを おろせ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
チッ
屍を
好んでまさぐる
いまわしき
やつらです
乗員たちが 誇りたかき 親衛隊の船が けがれると 不平をいって おりますが
フフフ……
しかし
もの探しには
べんりな
やつらだ
なんとしても あれを みつけ 出さねば ならん
何者かに もち去られた あとだと いうのか まちがい あるまいな
発芽のようすから この朝落ちたと 思われます ニオイは残ってい ますが お探しの ものはありません
この冠を つけたものに 蟲たちが 強い ニオイを感じて おります
しかも しの屍は 丁重に ほうむられて おりました
ペジテ市の 王族の姫が つける 冠だな……
あのあたりに 小さな船が 降りたあとが あります
戦隊長 その船が 持ち去った のでしょうか
この近くの 船だとしたら ……
ただちに 出発!!
風の谷へ いく!!
姫さま 帰りが おそいので 心配しまし たぞ!
どうなされた まるで戦闘を してきたように 船体が汚れ ている
ちょっと事件が あったの いそいで火を もってきて
船内に まだ胞子が のこって いるわ
ハハイ 腐海にまた おいでか
テト おとなしく して すぐすむわ
アチチッ!! そう火を 近づけるな
腐海にいった バツだ!! 一粒でも畑に しのびこんでみろ 大さわぎだぞ
私から話すまで みんなには だまって いて
主砲の弾丸を 補給して いつでも飛べる ように たのむわ
ハイ
姫さま あわてて 何事です !?
風見のジイ 見張りを かためて
キヤッ!!
あっ ごめん
父上!!
たいへんなの ペジテ市が !!
まて!!
そのざまは
なんだ
ナウシカ
たとえ どのような 場合であれ 族長が そのように 取り乱して どうするのだ
上に立つ者が さわぎたてては 民は不安を かきたてられて いたずらに 動揺するばかり だぞ
わしの身体は もはや石と同じだ おまえが谷の運命を 背負っているのだ
ジル そこまで背負わせる のか この子に…
事が大きければ 大きいほど 岩のように 静かであれ
わかったら はなすが よい
…… ハイ
隣国の ペジテ市が 滅びたと ……!!
避難民をのせた ただ1隻の船も 蟲におそわれて 炎上したわ おそろしい光景 だった……
ペジテは 平和な工房都市 しかも味方だ なぜ王は……
わしは いまだ このようなものを 見たことがない ………
なにかの 部品のよう でもあるが よほど 古いものだな
ペジテ市には 地中深く埋もれた 太古の都市から エンジンを掘り おこす坑道 がある おそらく そこから掘り 出されたものだ そう……
この石が 今回の事件の 原因としたら よほどの力を 秘めた石なの かもしれぬ
かなうものなら ラステルという 女の願いを かなえてやりたいの 兄という人に 渡してあげたい
なんだ あの船は !?
トルメキアの 装甲コルベット だわ!!
王の親衛兵の 船だ! これはただごと じゃないぞ
みんな 城へ 集まれ !!
谷に 降りる気 だわ
遠くの畑に 出ているものへ 使いを早く
ペジテの船を さがしているの かもしれません 私いきます
ウム ……
いずれにしても 今回のことは やがて族長となる おまえの最初の 試練となろう
事の真実が 明らかになる まで慎重に 行動しなさい
ハイ!
姫さま! 検査も受けずに おりようと しています
腐海から胞子を 持ちこまぬために 谷の外で待つべき ものを……
小国と思って なめおって
ひどいことを… 種をまいたばかり の畑なのに
あの一帯は 焼きはらわ なければ ならないわ
蟲つかいだ!! 親衛隊が 蟲つかいを やとうなんて……
へたな対応を すると この谷も ペジテの二の舞 になって しまう
蟲つかいだ!!
谷全身が 汚染されて しまうぞ
これは 戦をしかける のと同じだぞ!
みんな しずかに! 私が ただして くる
私のメーヴェを ! ガンシップも ひき出して
ミトじい 援護を たのむ!!
おまかせあれ! なんならあんあ船 こなごなに してみせますぞ
テト いくよ!!
後席 エンジンを しぼれ!
ウッハハハ さすが 姫さま ひくく とぶわい
ギャッ
防御円陣!!
クソッ 小すずめが !!
まてっ!! 撃つな
風の谷の ガンシップだ !!
風の谷 ジルの子 ナウシカ !!
汚れた 蟲つかいを ともない 他国を汚染 されるとは 何事だ!
この剣より 一歩も先に 進ませぬ ぞ
ただちに 立ち去れ !!
われらは 偉大なるヴ王の 命により ペジテの謀叛人を 追ってきた
蟲つかいは コマンドとして わが軍に編入 された兵である
この谷の 探索を みとめよ!!
ことわる!!
この谷に 謀叛人 など おらぬ
風の谷は 王との盟約を たがえた ことのない 辺境自治国 だ!!
たとえ王の親衛兵 といえども 守るべき作法が あろう!!
あの蟲つかいの 持っている 冠は!?
なんという ことを!! あの子の墓を あばいた のだ
チッ チッ チッ
死者まで もてあそぼ とは!! ゆるせない この石 けっして 渡さぬぞ
チッ チッ チッ
チッ チッ チッ
動くな! ナウシカとやら
フフフ…… 蟲たちが 我らが探す ものを かぎつけた ようだ……
どうした !?
蟲が 蟲が ……!!
この娘 あやしき 技を……
トルメキアの 男どもめ よくも わが身を いまわしき蟲で 恥ずかしめ たな!!
ゆるさん !!
おもしろい 相手を しようぞ 小娘!
果たし合いだ 姫さま やつらの 挑発に乗せられ たな
ガンシップ を狙え!
あれは!?
まてっ 双方 剣を ひけーーっ
あの男は ユパです !!
ユパだと!! 腐海一の剣士とは あの男のことか ………
ナウシカ 自重しろ
この谷を 戦場にしては ならんぞ
これが あの ナウシカ か……
攻撃衝動に もえる 王蟲のように 怒りで我を 忘れている
オオッ!
とどめ !!
双方 動くな !!
動けば この王蟲の甲皮 より削り出した 剣が セラミック 装甲をもつらぬ くぞ…
きけっ この果たし合い 結着をつけては ならん
いずれが 倒れても 憎しみが 憎しみを よびおとし
古い盟約で結ばれ 同じ戦列に並ぶべき 者が意味もなく 殺しあう内戦と なろう
親衛兵にきく 王は辺境の 作法を破って 内戦を生ずるよう 命ぜられたのか
あるいは 自らの失策の ために貴公たちは この辺境の地での 名誉と無縁な 死を選ぶと いうのか
ならば 辺境の民は 誇りと自治権を 守るために 死をいとわず 闘うぞ!
風の谷の 者もきけ
腐海のタブーを 知らぬが故に 犯した誤ちだと するならば 逆上して谷の 命運をかけるのは おろかであろう
………… ナウシカ ………… ………
ナウシカ 気がつい たか…… …………
力をぬくな まだおわ っておちぬ ………
この果たし合いを つづけて 双方ともに滅びの 道をあゆむか 返答 せい!!
みごとな 仲裁だ わが方から 剣をひこう ユパ殿
負傷者を 収容して ただちに 引きあげる
ハッ
女だ まだ若い
……… ………
蟲つかいどもの 錯覚であった 無断で谷に踏み 込んだ件 ゆるされ よ
それにしても みごとな 剣さばき その剣見せて くれぬか
うわさにきく 蟲の皮の剣 とはこれか… セラミック刀 より軽いな ……
フフフ…… 相当の深傷の はずだが 抜きとるとき 血糊をふき とるとは ……
ナウシカ とやら また会えるかな
戦場で いずれ ……
ハハハ
小気味よい
返事だ
されば!!
あの兵隊 もう 死んでいた ……
……
……
……
みんなに 答えて やりなさい
姫さま 素晴らしい武者 ぶりでしたぞ わしはほれ なおした
ちかごろ こんなに 痛快なことは ありません わい
親衛隊の 装甲兵をたお されるとは 末代までの 語り草じゃ!
オイ なれなれしく 姫さまの手を 取るな
うるさいわい わしは 城オジじゃ 役得じゃわい
それにしても するどい突きだ 見ろ 下に甲皮の手甲 をつけている のに 手袋が だいなしだ
さすがは 不死身と いわれる ユパさま だ
姫さま みんな不安 なのです ご指示を ………
わかって る………
さあ親衛隊の 落とし物を あとかたづけ しなければ ならないわ
この畑から 風下一帯を まず焼き払う
森へも飛んでいる はずだわ 一粒も 見のがしてはだめ 集めなさい
ユパさま 傷の手当てを させて下さい
かまわんよ わひは城に もどっていよう
ガンシップ より 旗旒信号 !!
『航海の 安全と 武運長久 を祈る』
親衛隊の コルベットと 対等のつもり なのです 回答します か
『谷の繁栄を 心から祈る』 とでも答えて おけ
ガンシップ 反転しま した!
フフ あのガンシップ 戦線では私の 指揮下にもらう ことにしよう ……
すまぬな 城ババさま
手甲を
貫くとは
のう
……
……
あんたでなけりゃ 手首がちぎれて おったろう この傷ではつぎの 新月まで腕は 使えんよ
わしが 止めに入った ときには すでに その兵は死んで おった
礼をいわねば ならんな ユパ ひとりで斬り込む とは軽率も はなはだしい 殺されても当然だ
相手は 単独行動の小戦隊 なのだ 証拠などすぐ消せる ガンシップで 皆殺しにすべき であった
将来に 禍根を 残すより ましだ ……
兵を殺されなが らも形勢をもて すぐ兵をひく その女の戦上手 おそらく ヴ王の第四皇女 クシャナだろう
皆殺しにする 力がないのなら あの石など くれてやれば よいのだ……
あるいは そうかも しれん …… しかし
あの子は 自分にひそむ おそるべき力に はじめて 気がついたのだ ……
自分に おびえて 震えて いた……
姫さま このウロ です!
何度も 調べたはず なのですか
ムシゴヤシ だわ そう とう菌糸が くい込んで いる
いまからでも 焼きはらえば 教えません か!?
まって 木に聞いて みろ
なんで見落とし たんだ よりに よって長老の樹 を……
静かにしろ いま姫さまが 調べている
こうなったら 姫さまに まかせる しかない
………
………
………
プチッ
プチッ
………
プチッ
まさか
こんな梢の
先まで
……
血!!
しっかり
しろ
ナウシカ
!!
ああ
……
……
なんとか なりませんか 幹をえぐり 取るとか…
500年も 谷の水源を 守ってきて くれた大事な 木です
もう 全身に菌糸が くい込んで いるわ
老木なので 組織がもろく なって いたのね
燃やそう…… 夜明けになれば 全身から発芽 して瘴気を 吐き始める
………
………
………
テト
……
もう
もどって来て
くれないのかと
思ってた
……
フフ
……
わたし なぜ族長の 家なんかに 生まれたん だろう……
この日 トルメキア戦役勃発す
また心配性の 父王が軍目付を おしつけて きたという わけか
歓迎はせぬが 着任を みとめよう 名乗れ
軍大学院より 選任されました この辺境作戦が おわるまで参謀 としておつかえ します
クロトワと お呼び下さい クシャナ殿下
私のおもり
とはおまえも
貧乏クジを
ひいたな
主戦線の
有様をはなせ
クロトワ
進撃は順調に進んでおります
3皇女殿下のひかいる軍主力は
海上より土鬼諸侯国の本拠を
急襲 すでに50リーグに
わたり敵地をじゅうりん
しました。
昨日までに
土鬼どもの7小国が降服
塔多き土鬼の11の
市城が陥落
3皇子の得たドレイは
1万をこすとか
土鬼諸軍は
戦意に
とぼしく
決戦をきらって
奥地へと逃走中
であります
王都は戦果に
わきかえり
3皇子をたた
える歌にみち
土鬼の聖都 シュワの攻略も 夢ではないとの うわさが…
もうよい
ハッ!?
………
ここは はなばなしい 戦にもドレイ にも無縁の地
あるのは
錆だらけの砂嵐と
蟲のうごめく
腐った森だけだ
腐海を南進して 土鬼の辺境を おびやかせ か………
フン
ていのよいお払い箱
ではないか
秘石を得るまで
帰るなという
わけだな…
されど
ヴ王陛下はこうも
申されておられ
ますはず
秘石をもたらすな
らば 最高の戦功
となし第1級の
栄誉もほしいままと
………
ないものは
ないのだ
もうよい さがれ
ハッ
……
殿下はごきげん
ななめだ
オレはペジテの
廃墟でも見物
してくる
参謀殿 馬は?
いや
歩こう
オレは平民出
だからな
そいつは
苦手なんだ
納得できません
われわれだけで
腐海を南進せよ
とはいかに
王の命令とはいえ
ひどすぎる!!
おまけに
姫殿下が育てられた
戦隊主力を
ことわりもなしに
兄君の軍に
くり入れたとは…
ペジテ市を つぶすために 編成されたわずか 兵300の小支隊 に何をせよと いわれるので しょう
そのかわり
辺境諸族の
兵力はすべて
われわれが
もらうことに
なった
いつ叛乱を
おこすかわからぬ
雑兵の群がなん
になりましょう
申しあげにくい
ことですが
兄君方の陰謀では
ありますまい
か……
秘石を殿下が
故意にかくされたと
王に密告した
としかおもえ
ません
王都にもどり
ましょう
あなたがご決意
下されば私どもは
死をもいといませぬ
軍の主力も
そのほとんどが
いうな
そなたたちの
忠誠はうたがわぬが
いま動けば
3人の兄たちの
おもうつぼだ
これ以上
王家の者を
そしるのは
許さん!!
諸族に伝令を送れ 明日正午 空中集合 王の名において 出撃するとな
やれやれ
もったいない
ことをする
これほどの工房
都市を破壊しつ
くすとは
再建は
もう
できまい
……
とまれ!
何者だ
蟲つかいども
ひたいの印が
見えんのか
軍参謀だ
おまえたちの
長はどこだ
ここの
警備をまかさ
れました者の
長ゴワで
ございます
オッと
それ以上
近づくな
噂どおり
すごいニオイ
だ
例のものを
みたい
案内しろ
警備の代償は 宝さがし というわけ か
ヒヒヒ
クシャナさまは
おはなしの
わかる方
でしてな…
坑口です
これより先は
その者が
ご案内します
おそろしく
深い穴だな
500年エンジンを
掘りつづけた
ときくが…
まよい込むと
二度と出られ
ませぬ
ご用心を…